2014/08/25

自力で「水を切る」快感──旧中川

2014.8.13【東京都】──「隅田川を歩く_22」


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四つ木(Map)

 京成電鉄四つ木駅前で漫画『キャプテン翼』のポスターを目にします。「南葛=葛飾区の南」だったのかと付近が舞台と知り、懐かしさから翼クン像を!
 バカ売れ期の「週刊少年ジャンプ」(Dr.スランプ等)は、読んでないと会話にならないほどでした……

 駅に近い「玉子家:玉子焼きと国産うなぎが売りの割烹」で「玉子丼」をいただきました。普通においしい上に570円は魅力です。
 屋上ビアガーデンに『もやサマ』が訪れ、首都高速に隣接するため根元しか見えない東京スカイツリーに、モヤモヤしたらしい……


かつしかハープ橋(Map)



 1987年に開通し「世界初の曲線斜張橋」「勾配がある複雑な立体構造」など、構造の特殊さが強調されます。
 見上げると迫力ありますが、以前バイクで通った際「自分がハープを弾くような…」では気取りすぎか?

 右は上平井水門の上流側で(綾瀬川・中川合流地点)、下流側からの圧力に備える構造を持つ、高潮や津波に備える水門です(低地のため、運河の水門のような役目)。
 東京のWestsiderは、多摩川等で目にする取水堰との違いに驚かされます。
 

旧中川 木下川(きねがわ)水門(Map)


 以前の中川流路(奥の水門→手前)は、荒川放水路(左→右)造成により分断され、奥の上流部は荒川と共に海へ注ぐが、手前の下流部は地盤沈下地域のため締め切られ、木下川水門〜荒川ロックゲート間は旧中川(流れのない運河)とされます。
 水辺公園とされた旧中川では、大空襲の火から逃れようとした多くの方が犠牲になり、お盆には慰霊の灯篭流しが行なわれます。

 海水面より水位の低い運河では船の往来も限られ、付近ではボート教室や東墨田レガッタなどが開催されます。
 右は橋の下を艇庫とした施設で、ボートの船底は白くコーティングされており、鏡面のように光を反射する様に驚きます。
 この艇は4人乗りで各人オール2本用ですが、4人乗りでも『がんばっていきまっしょい』の映画版は1本(スイープ)、テレビ版は2本(スカル)など、競技の種類は多いようです(コックス:舵手の有無でも異なる)。
 キツそうですが、自力で「水を切る」感覚が得られるのは、手漕ぎボートだけかも知れません……


墨田区立 立花大正民家園「旧小山家住宅」(Map)


 旧小山家住宅(大正6年:1917年)は、関東大震災・東京大空襲を生き抜いた建築物としてもまれですが、当時の姿で庭まで保存・公開されることに驚きます。
 事業施設が隣接するなど見晴らしは望めませんが、格子戸から玄関への石畳など、当時の築庭ビジョンが見て取れます。虫が多いのもそれゆえか?


 堤防脇で見かける、2階から堤防への出入り口ですが、これは古い木造でちょっと怖そう(使ってない様子)。

 付近で目にした海抜表記は「海抜 -1.2m」(一瞬ハイフンかと)ですし、四つ木「玉子家」付近では「荒川のはん濫により3m以上浸水するおそれあり」の看板を目にします。
 来訪者が目にしてもへこむ警告ですが、地域住民に対する意識づけは大切で「とにかく逃げろ!」しかありません。


追記──「豪雨」「台風」被害続きの夏でした……

 平地の少ない島国はどこも山・川・海に近い土地ばかりで、備えようにも自然の猛威に抵抗のすべは無く、逃げるしかありません。
 ニュースの言葉に「五感を研ぎ澄まして」とありましたが、普段からサバイバルな状況と背中合わせであると肝に銘じるべきステージに入ったのかも知れません。
 都会でのほほんと暮らすわれわれは生き残れるのか? ではなく、都市(平地)に身を寄せるから生き残れる、としたら郊外に暮らす人々はどうしたらいいのか?
 現実として「管理しやすい都市に集まれ」と誘導してはいまいか?


速報?──第33回浅草サンバカーニバル(8月23日)

 小雨なんかぶっ飛ばし、予定通り盛り上がります。
 参加者のパワーに圧倒されますが、浅草にも「阿波踊り」「よさこい祭り」のような踊るイベントが欲しかったということなのでしょう。
 「三社祭」〜「隅田川花火大会」で夏が盛り上がると、「今年も踊りたくなっちゃった…」と、祭り好きの血が騒ぐのかも知れません……
 詳しくは後日。


2014/08/18

窓辺にもれるお姉さんのため息──旧玉の井

2014.8.2【東京都】──「隅田川を歩く_21」


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東武博物館(Map)


 現在も東武伊勢崎線東向島駅の看板には「旧玉ノ井」の表記があります。
 昭和初期に地名は消滅するも、玉の井町会(墨田3丁目、東向島5丁目周辺)として活動する住民の意向だろうか? でも、旧地名を町会名に残すのはいいアイディアです。

 駅の高架下に、東武鉄道の歴史を展示する「東武博物館」があります。
 人気の「東武電車でGO!」(勝手に命名)は、実物の運転台と沿線映像の使用に加え、サポートの運転指導員が臨場感を高めてくれます(上は蒸気機関車のエンブレム)。


旧玉の井地域(Map)


 玉の井は旧地名ですが、俗称の「玉の井」は1918年(大正7年)~1958年(売春防止法施行)まで存在した私娼街(非公認〜戦後は公認の赤線地帯)を指す。
 1918年頃に浅草「観音うら」を追われた「銘酒屋:めいしゅや(飲み屋を装い売春を提供する店)」が移転したことに始まり、関東大震災(1923年)以降は浅草での営業が禁じられ、市外に認められたこの地や亀戸に定着します(隅田川を渡ると市外)。
 亀戸と違いヤクザがいない「堅気の町」という評判だったそう(上は写真店)。


 私娼街が戦争までの20数年間で5つの地域を転々としたのは、火災で焼け出されたためでしょう。
 永井荷風の小説『濹東綺譚:ぼくとうきだん リンク先はPV風動画』(小説は未読で、新藤兼人監督の映画内容も覚えていない)、滝田ゆうの漫画『寺島町奇譚:てらじまちょうきたん』の舞台は戦前の地域らしく、すべて空襲で焼けました。

 痕跡が残るのは、戦後「赤線」とされた地域だけで、そんな名残も右の窓飾り程度しか見当たりません。
 付近の再開発では土地がまとまらないらしく、小規模な建て売りの内覧が目につきます。


 滝田さんの漫画で印象に残るのは、窓辺に腰掛けたお姉さんがため息をつく情景です(犬がいましたよね?)。
 事情を理解しながらも、若い男が勢いにまかせるような熱情で接してしまうのは、その手の女性と身近すぎるからで、諭されながらもお姉さんのうれしそうな表情を見たいゆえ、苦悩が生じたのでしょう……

 右も以前の痕跡を隠したように見えますが、元はただのタバコ屋だったらゴメンナサイ。
 でも、檀一雄、太宰治、サトウハチローなどを引きつけた飾りっけのない魅力とは、「ここはタバコ屋じゃないのか?」というような身近なフックではなかったかと……


 名残はほとんど目にできませんが、滝田さんの世界に迷い込めそうな路地裏探索を楽しめました。
 リアルさがないのでノスタルジーに浸れますし、人なつっこさを感じる(人を拒まない)印象がこの町の魅力かも知れません(上は骨董屋の玄関)。

 またそんな所に引っ掛かって、と言われそうですが、野郎の「少年性」≒「滝田少年の関心事」(ほぼ同じ)ですから、いくつになっても「目にしないと気が済まない」ものなのです……


追記──盛り上がりそうな盆踊り


 上は8月15日の柴又帝釈天境内で、いまアップしないと時季外れになると思い。
 寅さんが騒ぎを起こしそうなハレの舞台です。
 8月13〜15日に柴又青年団(青友会)主催の盆踊りが、22〜24日に同じ場所で柴又商店街主催の「寅さん祭り」があるような踊り好き? らしい。
 お寺での盆踊りはあまり目にしないが、これが庶民に身近な帝釈天の姿のようです。

 普段は働いているお盆の時期に休めたのは、雑誌を作っていないためです。
 どうなることやら……

2014/08/11

海抜「0.3m」という現実──向島

2014.7.21【東京都】──「隅田川を歩く_20」


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東京スカイツリー下(Map)

 今回は押上駅からスタートなので、スカイツリー下をのぞいてみれば夏休みの大混雑! 2時間半待ちの整理券が配布される日陰には人があふれています。
 運営会社側の「待ち時間にお金を使って!」の商魂も、満員で店内に入れないうんざり感には大阪万博を想起するので、時期を外した平日に挑みます……

 最寄りの「旧業平橋(なりひらばし)駅」→「とうきょうスカイツリー駅」、「押上駅」→「押上(スカイツリー前)駅」、「東武伊勢崎線」→「スカイツリーライン」など、どの案内表示にも同じ名称が並び、分かりにくい!
 表記から「スカイツリー」を省略せよ! と言いたくなります……


牛島神社(Map)

 付近の海抜表示は「0.3m」とあり、運河に近い田町(自宅)周辺の4m程度に比べ、かなり低いことに驚きます。
 現在の河口から距離があり「上流」の認識があるも、隅田川は港湾の「運河」と考えた方がいいようです。
 江戸時代までよしが茂る湿地帯に地盤沈下が加わり、自力での生活が不可能な地域となりましたが、スカイツリーは地中深く基盤まで杭を打ち込むため、沈下の際には「浮き上がる」と申しております……(ツリー住所は押上)

 神社は明治期の神仏分離から本所の総鎮守とされ、名の通り狛牛(こまうし)や撫牛(なでうし)が並びます。
 右は、若い女性が乗った車が走り出してしまい、二台目のオッサンを……


三囲(みめぐり)神社(Map)


 元三井財閥の「井」を囲う神とされ(字面合わせ的)、狛犬脇に旧池袋三越のライオン像が鎮座します。
 上の三柱鳥居は三井邸から移設されたそうですが、ルーツは京都「木島(このしま)神社」ではあるまいか(三井家の縁は松坂や京都)。

 関心が無いため、「三越」が「三井」創業時の呉服店「越後屋」に由来するとの説明書きに、「ヘェー!」を押しちゃいましたが、すぐ忘れそうです……


墨堤(ぼくてい)常夜燈(Map)


 台座の「本所総鎮守」とは前出の牛島神社で、たもとにあった「竹屋の渡し」からの案内として、明治時代に神社の灯籠として立てられました(震災後神社は移設)。
 街灯のない時代、向島のシンボル的存在は近隣の花街(かがい)に客を誘ったとも。
 現在の見番(芸妓置屋、待合、料亭の事務所)は向嶋墨堤組合とされ、建設会社の事務所的な外見ですが、リンク先に花街の健在ぶりが見られます。
 調べるうちに「玉の井」(旧赤線)が近いことを思い出し、様子は次回報告します。


桜橋(Map)


 1985年隅田川に架けられた人道橋「桜橋」にようやく足を運べたのも、スカイツリーのおかげです(浅草に近いも用事のない地域)。
 言問橋〜白鬚橋間1.6kmをどう感じるかよりも、両岸にある公園間を自由に行き来するための架橋で、名の通り花見客向けサービスが主目的らしい(向島側は高低差がある)。
 架橋より以前の「竹屋の渡し」復活をと思うが、昼間限定では却下されそうです。


待乳山聖天:まつちやましょうでん(Map)


 川のほとりの丘にある浅草寺の子院です。
 上の石碑だけでなく本殿内にも大根が積まれるのは、大根で身体を丈夫にし、良縁成就〜夫婦仲良く一家の和合を祈願するためらしい(右は丘を上るスロープカー)。

 作家 池波正太郎の生家は付近らしく、作品は「浅草うら」の感性と思いきや、関東大震災後に様々な理由で転々とする中で重ねた体験によるようです。

 当初はここで「浅草に続く…」のつもりが、花火大会を先に掲載したため、何だか中途半端になりました……


 追記──NHKドラマ10『ハードナッツ!』(難問、変わり者の意)

 NHK連続テレビ小説『あまちゃん』で「可愛い方」とされた橋本愛は、引き立て役不在のせいか可愛く見えないが(Wで失礼!)、役柄のおかげで好感度を上げ「海女の方」を引き離したか?(誰が演じても可愛い役柄ではあるが)。
 副題「数学girlの恋する事件簿」のように、数学しかできない(天然娘)という人物設定が楽しく、難問を解いた達成感を「理解して欲しい!」心情など、数学の快感表現としては「実に面白い!」。
──研究者の自己満足は、名誉でなく社会還元に役立てるべき!(自殺後も汚点は残る)

 一方「海女の方」能年玲奈をバラエティで目にし、「予測できない天然さ」を生かすべきと感じました(ホメているつもりです)。


 追記──東京湾大華火祭は台風による荒天で中止(2014.8.10)

 現在暮らす公団住宅では毎年花火大会の日に「団地祭り」を開催しますが、今年は花火大会が中止とされた豪雨の中でも「東京音頭」が流れます。
 屋上に屋根のあるスペースがあるので、GO! を出してしまい収まりがつかなくなったのか、しばらく音楽が流れていました……

2014/08/04

大人の世界「観音うら」──浅草花街

2014.7.26【東京都】──「隅田川を歩く_19」


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浅草花街(Map)

 隅田川といえば浅草ですが、見聞があるのは浅草寺までで、「観音うら」とされる大人の世界に初めて足を踏み入れたものの、オヤジになっても昼間限定です……

 「花街:かがい」とは、芸者(京都は芸妓:げいこ)を呼んで楽しめる、置屋(芸者の芸能事務所)、待合(食事なしの貸席:現在のラブホテル)、料亭の三業種の営業が認められた地域で、三業組合事務所が「見番:けんばん」とされ、浅草寺北側に浅草見番があります。
 都合のいい表現と思うも、芸者遊びこそ歴史に磨かれてきた日本の「お・も・て・な・し」なんですって……
 「花街:はなまち」の読みは歌の世界だけらしい。


 引き戸上の欄間?(らんま)から敷地内の竹が見える、チラリズムの感性は京都の受け売りに思えるが、江戸っ子が受け入れたのかと驚いたりします。
 もとより江戸は品性と無縁な土地柄で、「辰巳芸者:〝芸は売っても色は売らない〟と男羽織で客をもてなす」など、飾りのなさを好む気風がありました。
 客側には甘えた感覚があるようで、「飲んだらさっさと帰っとくれ!」と、杉村春子さんのような威勢よさが評判になるなど、江戸の男たちはだらしなかったようにも……


 上は同じ路地にあるも庶民的で気取らない店らしく、これを目にした江戸っ子は夕時「座布団暖めて待っててくれたの?」と言いたくて店に入ると、「もちろんよ、あれが昼間の看板だもの!」なんて、落語のようなストーリーが浮かんできます。
 初めての地を、知ってたかのように感じるのはメディアの影響にしても、そんな情報が実際の見聞にはまる下町情緒の好感度はUPです!


 近隣に「浅香光代事務所(元女剣劇役者:神田出身)」「アニマル浜口 トレーニングジム(島根県出身)」を見かけ、付近の「元気印 Welcom!」という地域性は、下町っ子の人なつっこい性格の表れではあるまいか?(口べたやさみしがりが多いのか?)とも。
 上は「窓つぶしちゃった?」ような寿司屋の外装。入るには相当の覚悟が必要です。


「花やしき」周辺(Map)


 上は浅草ビューホテル(下町っ子のステータス! 以前勤めた御徒町の会社でパーティーを開いた)に近い「助六の宿 貞千代」で、浅草に立地し外国人観光客受けを狙うコンセプトですから、かなり人気高そうです。
 わたしが初訪問の外国人で、そこそこの料金であれば「浅草はここ!」と、ガイドブックにチェック入れそうです……


 上は花やしき前にある食堂の見本ですが、子どもには「お子様らんち」の札の汚れより「新幹線古くな〜い?」とツッコまれそうです。
 開業時は「緑」だった東北・上越新幹線のイメチェン同様車体を赤く塗って、「コマチ!」(浅草では通じて!)としても、「型が古〜い」とか言われそう……

 ここ数回の散策で「男の業マップ──浅草編」なる、バカに単純な地獄絵図が浮かんできました。
 演芸場や映画館に足を運んだ野郎が、気分が高まり立ち寄ったWINSでたまたまラッキーに遭遇すると、気が大きくなり普段立ち寄れない「観音うら」で、夢の芸者遊びを堪能し、有り金は「吉原」で! のつもりが勘定が足らず、身ぐるみはがれて「山谷」に投げられる……
 なんて映画があったような?

 金が無くなればポイと捨てられるのは当然だが、浅草が抱かせてくれるのは「あぶくのような夢」なのか……


浅草寺界隈(Map)


 隅田川花火大会当日の浅草寺界隈では、満開の「浴衣の花」に夏を実感できます。
 決して涼しくないオシャレ「浴衣の競演」あってこそ祭が盛り上がるってもんです!
 とんでもなく混雑するのは、普段浅草では少数派の若者が花火に集まるためですが、若いころ浅草の花火に行った思い出は一生モノのですから(自分も含め)、着飾って繰り出す気持ちは理解できますし、機会があれば行くべきと思います。


 わたしも含め外から(外国人など)の目には、当初は「あこがれ」である京都の亜流に見えても、身近に感じられるバイタリティー(おせっかい)という「江戸の楽しさ」が伝わってきますし、町の「芯」に暖かさのある町だからでしょう、どこを切り取っても絵になることに納得し、好きになるのだと思います。
 やはり、東京で一番楽しい町は浅草ですよね!?


 花火大会の交通整理で、雷門前にDJポリスが出動!
 なるほど、耳に残るような言葉の選び方やゆったりとした語り口が心地よく、何気なく耳を傾けてしまい「るせーな!」ではなく、「はぁ〜い!」と納得させられます。
 その場で、イライラ感が和んだのは自分だけではないだろう、と思わせる技に座布団をあげたい!

 開始前に退散の際も大混雑でしたが、隅田川の花火は真下から見上げ、シャツに焦げ跡が残るような「熱いシャワー」の臨場感を味わってみるのも一興かと……